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ARTISTS

Andrew Wyeth

アンドリュー・ワイエス

1917-2009 / アメリカ

アンドリュー・ワイエス「クリスティーナの世界」
テンペラ、石膏塗りの板 1948 (ニューヨーク近代美術館)

アメリカンリアリズムを代表する国民的画家。ペンシルヴェニア州チャッズ・フォードに生まれる。父親のN.C.ワイエスは著名な挿絵画家。虚弱だった少年時代ほとんど学校教育を受けられず、家庭教師に読み書きを習い、父親の導きで9歳から水彩を描き始めた。チャッズ・フォードと毎夏を過ごしたメイン州クッシングという限定された2つの場所と、そこに暮らす人々の日常が、ほぼ一貫して描かれたテーマだった。水彩画家としての地位を確立後、古典的なテンペラ技法を習得。初期ルネサンスの巨匠とりわけデューラーと、ボッティチェリの作品からの影響を受けている。
1948年ニューヨーク近代美術館が買い上げた作品「クリスティーナの世界」は特に知られる。広大な草原にたたずむクリスティーナは、画家の別荘近くの荒涼とした家に住んでいた手足に障害を持つ女性。1939年の出会いから彼女の死までの30年、画家はモデルの人生にある悲劇と喜びの二面性を観察した。自宅近くの農場で働いていたドイツ系女性ヘルガが38歳から53歳までモデルを務めた「ヘルガ」シリーズ246点は、15年間、妻のベッツイにも知られず密やかに描かれた。一つの作品の完成までには、素描や水彩の習作が数多く試みられた。長い年月のなかで対象に感情を深く入り込ませ、綿密なイメージの連作が仕上げられた。年を重ねていくモデルの心身に宿る荘厳な美しさが、抑制されたトーンで表現されている。
家の外観、室内、日常道具など、慎ましくささやかな対象にも注意深く目を向けた。アメリカの自然や伝統、人間に対する深い思索から、孤独感や寂寥感のなかにも静けさ、穏やかさ、透明感の漂う、複雑な情感に満ちた作品が生み出された。

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