NUKAGA GALLERY

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2018年.03月.05日 Monday

ART FAIR TOKYO 2018 作品紹介 | 桂ゆき

NUKAGA GALLERYがアートフェア東京2018で展示する作品紹介、今回がラストとなります。
第4作目は桂ゆきによる≪作品≫です。

(500)16-1  350dpi  葉書サイズ
桂ゆき《作品》1979年

着色もなく同じような表情をして無造作に並べられた、無機質なコルクの集合体。
まわりの空間へと際限なく広がっていく集合体のエネルギーが一瞬にして遮断されたような静寂と緊張感がケースの中で漂っている。
桂は1935年のコラージュ個展を終えたあとのある日、屋根瓦を見下ろし、同形の瓦の起伏が規則的に際限なく連続して広がっている光景をみてショックを覚える。瓦とは関係のないある画面を予感してそれがどういうことなのかわからないまま胸にひっかかっていた。そして、苦し紛れに工場裏を歩いていた時、コルク屑と出会いあわてて拾い集めた。
夢中でありあわせの板に、一つ一つ隅から隅までびっしりと張りつめた。できあがりを眺めながら、こんな作品は今までどこにもないだろうと、一人で悦にいった。それで胸のつかえがとれたわけでもなかったが、今後はこのコルク作品をも追求しようと思い、それを油絵にしたりした。

(「コルクのもつ意味」桂ゆき、『美術手帖』1979年7月)

これは戦後アメリカ合衆国を中心に展開したミニマル・アートに共通している。ルネサンス以降の伝統的な構図というものを否定し、作品に装飾的・説明的な部分だけでなく素材に手を加えたという痕跡や意味すら削ぎ落とすことで、反復性、対称性、連続性といったものがただ無機質に強調される。このコルクによる作品は戦後も制作され、1979年6月の「桂ゆき展 第1回展1978年、79年の作品より」(東京画廊)には新作10点が出品されている。

桂にとって画業の初期である1930年代には細密描写とコラージュと戯画的表現が展開していった。コラージュについては、作家の内にあるものを表現するために独自の発想により生み出された表現方法であり、フランスから帰国した海老原喜之助氏によりそれがコラージュであると教えられている。印刷物や布を貼ったりコルクを隙間なく並べたものが制作され、一つの画面で細密表現と並置させたりした。また、30年代後半から油絵に漫画的な表現を用い、世相を風刺したブラックユーモアのある油絵を制作している。尚、桂の作品で絣や和野菜など日本の土着的なものをモチーフとしている点は世相の風刺だけでなく西洋美術の流れに則った伝統的な絵画表現への挑戦など複合的思考を窺わせる。

YK-1紙の上に写真でコラージュした作品、1930年

YK-1_0001左から《人間(I)》《人間(II)》、1938年

YK-1_0003細密描写で描かれた《大きな木》1946年、油彩、カンヴァス

50年代後半からのヨーロッパとアフリカ滞在を経て辿り着いたニューヨークでは、カンヴァスの上に部分的に和紙を貼り着彩した抽象的なコラージュの作品が多く制作され、一部はアリゾナ大学美術館に収蔵されている。帰国後は単純化されたかたちのキャラクターを据えたコラージュ作品を通して様々な問いを投げかけた。

IMG_1096《無題》1961年、油彩、紙、カンヴァス

YK-1_0002《ゴンべとカラス》1966年、油彩、木炭、紙、紐、カンヴァス

このように桂ゆきは画業の晩年まで絶えず批評精神を携えて独自の表現を探求していった。美術の既成概念にとらわれない、まさに日本の女性前衛芸術家の先駆者である。

フランスの流れをくむ日本人の描いた油絵について、
たとえ貧しくとも、見劣りがしようとも、主人を持たぬ自分独自の創造をしたい、マチス、ピカソを御主人としたり、逆にそれらの世界的芸術を、他教の教えとして異端視する無知を避けながら、理解ある目で世界の芸術を咀嚼し、自分は常に主人でいたい

(「ジュラルミンの塀」、桂ユキ子、『山陽日々新聞』1952年3月1日、『秋田魁新報』1952年3月7日)

参考文献:『生誕百年 桂ゆき-ある寓話-』東京都現代美術館、下関市立美術館、2013年
『女ひとり原始部落に入る アフリカ・アメリカ体験記』桂ユキ子、1962年、光文社
 

By Aya

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