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2016年.05月.10日 Tuesday

ART FAIR TOKYO 2016 作品紹介 | 元永定正

元永定正(1922−2011)さんのインタビュー記事などを読んでいくと、彼がいかに人間味のあるひょうきんな人物なのかが感じ取れます。そんな性格が作家としての考えやスタイルにも影響しているのではないでしょうか。制作に対する姿勢や発想も時にカジュアルで、金欠のため色水や石を使ったり、また他の素材を代用し作品をより好転させたりと。そして自分の趣向にとても正直でそれをざっくばらんに言葉にしています。「おもしろい駄作をたくさん作る」これは彼が長きにおいて持ち続けていたユーモアあふれる信念でもあります。

彼に作家となるきっかけを与えたのは、戦後の関西で精力的に活動していた前衛美術グループ「具体」への参加です。1955年から71年までの間、中心メンバーとして、他の作家達と作品のあり方や方向性などを様々な角度から模索し続けました。初期には何色もの色水をビニール袋に入れ野外で吊した作品や、舞台美術装置と煙を使ったパフォーマンスなど実験的な作品なども発表しており、以降は抽象絵画を中心とした制作をしていきます。「具体」を去った後も、意欲的に活動を続け、元永作品として馴染み深い、抑揚(動き)のある線や形を豊かな色彩でコミカルに表現された抽象画のスタイルを築きます。
私が初めて目にした彼の作品も、後期に制作された、親しみのある絵本やシルクスクリーンプリントでした。ですから今回紹介する絵画「作品」(1966年)は「具体」での活動期に描かれ、のちの作風のルーツの様なものを探れる貴重な作品であるとも思います。

元永定正 作品 1966年 油性・合成樹脂エナメル、キャンバス 22.2 x 27.5cm

元永定正 作品 1966年 油性・合成樹脂エナメル、キャンバス 22.2 x 27.5cm

この作品は絵の具やマチエール塗料をキャンバスへ流し込み、質感を押し出し、色の流動性やにじみ感などの効果を使い描かれたものです。60年代当時、彼はこの「流し」の効果で大小様々な抽象絵画を‘作品’という題目で残していますが、これらはキャンバス上で起きた偶然性だけを利用して表現しているのではなく、下絵であるデッサンを元に忠実にデザインされ描かれているようです。いわゆるハプニングを用いたアクションペインティングではないこの方法論に意外性を抱く人々も少なくありませんが、これは彼の想像する描きたいイメージが明確で、それにしっくりくる形や色味への探究心からくるものなのではないでしょうか。直感が冴えて出来る最初の線や形などは、新鮮味があり良いものが多いのですが、これを幾度か描く事で‘癖’にし習得する、そしてより自然に描く為の過程にも思えます。

確かに、彼の人間性や作家としてのこだわりを問うと、これら60年代の‘作品’は彼の言う「おもしろい駄作」という印象よりは、抽象表現に対するシリアスさが伺えます。その中で彼がどの様に制作のプロセス、素材や色彩と対話しているのかが見えてきます。
そして彼のアイデア源である自然界の生命力やそこに溢れている有機的な形、そして世界の重力感などが力強く画面に表現されています。内から外へと流動的に描かれた事により、肉体的で一見グロテスクにも見えますが、彼の特有なフォルム、色合わせ(バーミリオンと黒、赤と緑-ビリジャンの補色など)や差し色のイエローなどによって、どこかコミカルで少しとぼけている印象にも伺えます。これは彼の他の作品にも多く感じられる点で、リラックスした良い意味での‘隙’の様なものがあり、観る者の想像をより一層かき立てる空間と時間を与えてくれます。これは大きく言うと抽象絵画の特権なのかもしれませんが、彼の作品には、ただストーリー性の強い作品が持つなかば一方通行なやりとりではなく、そこに行き来する豊かな会話が生まれているような気がします。それは制作アイデアである「自然の・・・」というテーマが背景にあり、全人が共通して持つ関係性を独特なおおらかさで表現しているからなのではないでしょうか。そしてこの大きな魅力は、彼の気質やキャラクターがより引き立てており、「作家と作品」という切っても切れない繋がりも深く理解する事ができます。

By T.w.K

元永定正 かさねいろだま 1984年 シルクスクリーン

元永定正 かさねいろだま 1984年 シルクスクリーン

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